淫業の森

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「しかし、随分静かな森ねぇ」
 ふぅと息をつきながらエリシアは湿った地面に足を取られないよう、またいつ敵が現れてもいいように先へと進んでいた。
 目的のモンスターを討伐するために。

 話はさかのぼること数時間前。エリシアが剣の腕を磨くために諸国を巡っている最中にふと立ち寄った村でのことだった。
「へぇ、マンドラゴラ討伐か」
 宿屋で見た張り紙には中級モンスターの中でも弱い部類のマンドラゴラの絵と、とてもそれ相応とは思えない程に高額の賞金がかけられてあった。
 たかがこんなザコにこれだけかけるとは、何とも寂れた村らしいわね。おそらく村にある殆どの財産なんでしょうが、遠慮無く路銀の足しにさせてもらおうかしら。
 これまでに何度もマンドラゴラを倒したことがある。そしてその習性も倒し方も熟知している。
 エリシアの頬は自ずと緩んでいた。

「霧が濃くなってきたなぁ」
 初夏とは言え陽の射さない森の中での霧は肌寒い。村長からもらった地図を頼りにエリシアはそれまで以上に注意しながら森の奥へ奥へと歩を進める。
「そろそろだと思うんだけど……」
 地図が示すおおよその出現ポイントにもう着く頃なのだが、目の前は依然木々が乱立しているだけ。少し開けたところに出現するとのことだが、濃霧が視界を遮る。
 帰れるのかしら、この霧の中。
 そろそろ日も沈む。このまま夜になり、動き回れば遭難しかねない。
 とっとと倒して、ちゃんとしたベッドで寝たいんだけどなぁ。
 次第に苛々が募ってきたところで、目の前に少し開けた草原が見えた。エリシアはだが飛び出すことはせず、今まで以上に注意するかのようにそろそろと草原に踏み込む。
 あいつか……。
 広場の奥の方に一匹のマンドラゴラがいた。それはエリアシアに気付いたのか、奇妙に触手を動かしている。
 エリシアは剣を抜き、じりじりと間合いを詰めていく。
 イソギンチャクのような形状をしたマンドラゴラの触手は切ってもすぐに再生するが、接近すればさほど怖いものではない。一定の間合いを保ち、一気に詰めればエリシアの腕ならば一撃で葬れる。
「さてと、とっとと片付けてあげるわね」
 すっとマンドラゴラの射程に入ると、数本の触手がエリシアに向かってきた。だがエリシアは慌てることなく触手を鮮やかな剣技で切り落とすと、一気に間合いを詰めた。
「終わりね」
 無数の触手がエリシアに襲いかかるよりも早く、エリシアの剣がマンドラゴラを袈裟斬りにした。
「キシャアァァァァァァァァァ……」
 見事な一撃だった。ほぼ真っ二つになったマンドラゴラは触手を高々と天に掲げたかと思うが早いか、その体を二度三度痙攣させつつ力無く触手を垂らし始めた。
「余裕ね」
 とどめにと十字のような形で斬られたマンドラゴラは最期にびくりと動くと、もうそれ以上動くことはなかった。
「さてと、あとはマンドラゴラ特有の触覚でも持って帰れば村長も納得するだろう」
 事切れたマンドラゴラから触覚を奪おうとした刹那、不意に右ふくらはぎにちくりとした痛みが走った。
「痛っ」
 触手か?
 まだ生きていたのか?
 慌ててその方へ目を遣ると、土中から緑色の手が伸びていた。その爪は長い。
 いけない!
 すぐに飛び退き、その手から間合いを取る。剣を構え、戦闘体勢へと入る。
 が……。
「あぅ……力が、入らない……」
 全身から力が抜けていく。身構えようにも剣の重さに負けてしまう。足腰がガクガクと震える。
 とても立っていられなくなったエリシアは剣を手放し、その場にへたり込んでしまった。
 くぅ、筋弛緩か……油断した……。
 もはや動けなくなったエリシアにできることは土中から生えている手の動きを見詰めることだけだった。
 手は小指から薬指、中指、人差し指へと順にまるで喜んでいるかのように動いている。そして一頻り動いたかと思うとその手を中心に地面が割れ、土中から本体が姿を現した。
「気分はどうかな?」
「貴様、ノスフェラトゥか」
 全身緑色で体毛は無く、長い爪を頻りに動かしながらノスフェラトゥはエリシアを見下ろしている。その顔は勝者の自信に満ち溢れていた。
「マンドラゴラは囮だったってわけか……」
「その通り。各地では我が同胞が君のように腕の立つ者にやられているとのことなのでね、弱いマンドラゴラを囮にしていたってわけさ」
 悔しい。どうして気配に気付けなかったのだろうか。ノスフェラトゥは確かに吸血鬼の仲間だからそれなりのモンスターとは言え、私がこんな手にひっかかるなんて……。
「腑に落ちないといった様子だね。だがまぁあの霧を長時間吸い込んでいたんだ、注意力の低下は仕方あるまい」
「あの霧……まさか?!」
「そう、そのまさかだ。この森ならば霧が出ても不思議じゃないだろう」
「くっ……殺すなら殺せ!」
 侮辱されるなら死んだ方がマシだ。例えどんな相手だろうが、油断したのは私のせいだ。
 ならば潔く死のう。
「男なら躊躇なくそうするさ。だが女は我が魔力となる。お前は我が糧になるがよい」
 パチンとノスフェラトゥが指を鳴らすと、森陰から数匹のマンドラゴラが現れた。動けないエリシアをマンドラゴラは興奮したように取り囲む。
「こいつらは普通のとは違ってね、我が魔力を受けている。フフフ、少し楽しませてあげようじゃないか」
「だ、誰が!」
「お喋りはここまでだ……いけぇ!」
 ノスフェラトゥの命令にマンドラゴラの無数の触手がエリシアの体に伸びる。
「いやあああぁ〜」
 触手は全身にまとわりつき、装備を剥ぎ取っていく。抵抗する力の無いエリシアは嫌悪感と屈辱に顔をしかめることしかできない。触手はそんなエリシアにおかまいなく、更に絡みついていく。
 服は破かれ、両手両足の自由を奪われ、はりつけにされたような形でエリシアは汚れ無き肢体を醜悪なモンスター達の前に晒されていた。
 普段は鎧に隠されているためか、一度こうして晒してしまうと、女というものを強く意識してしまう。
 こんなことをされるくらいなら、いっそ……。
 エリシアが舌を噛み切ろうとした途端、
「んっ、ぐぅ」
 一本の触手がエリシアの唇を割って入ってきた。
「死なせはしない。ただ甘美なる世界へ誘うだけだ」
 全身に絡みついた触手がうねる。触手は重点的に胸や尻、秘裂をなぞるように愛撫を繰り返すが、エリシアは依然嫌悪に顔をしかめながら固く目を閉じている。
「心を開く気は無いようだな」
 冷たいノスフェラトゥの囁きにエリシアが細目で睨み返す。そんなエリシアの様子を楽しむかのようにノスフェラトゥは微笑を浮かべると、指を鳴らした。
 すると触手の先端から何か液体が出てきた。口内に、アナルに、秘裂にその液体は流れ込んで行く。いや、それだけにはとどまらず、全身に液体がかけられる。
「ん、んんぅ?」
 熱い。熱い何かが私の中に流れ込んでくる。いや、いやぁ〜。
 吐き出すことも許されず、全身から触手が放出する液体を吸収してしまう。飲み込むことができなくなってむせても、膣内や腸内がその量に堪え切れずに逆流させていてもなお触手は液体を送り続けている。
「よし、もういいだろう」
 口内から触手が抜けたのを合図としてか、触手は今まで以上の愛撫を行う。そのくねるような絡みつくような愛撫にエリシアは反射的に嫌悪を露にしようとしたが、
「えっ、いや、なんで……?」
 どうしてこんな触手に体が反応するの。こんなに奇妙な触手に弄られているのに、何でこんなに……気持ちいいと思っちゃうの?
 仄赤い乳首はぷっくりと膨らみ、秘裂からは注がれた液体とは別の液体が溢れ出してきている。
「いやぁ……あぅうん、、んはぁ……どうして、そうしてなのぉ」
 乳首や秘豆をこねくり回され、全身を触手の先でなぞられたり締めつけられる程にエリシアの体に甘い電流が走る。
「んはぁ、ああぅん、いやぁ、疼くぅ、疼くのぉ……んんぁう、ああぁ、ダメぇ」
 こんな、こんな刺激今まで感じたこと無いよぉ。私、このままじゃ……おかしくなるぅ。
「あっ、あはあああぁ、うんっ、うぅ、イヤぁ……そんなにされたら乳首千切れちゃうよぉ、壊れちゃうよぉ〜」
 痛い程に尖った乳首や秘豆、溢れて止まない愛液。エリシアはもう疼いて仕方が無い体をくねらせ、更に快楽を得ようと触手を求める。
 だが激しさから一転、触手は優しくエリシアを責めたてる。その緩慢な動きにエリシアの疼く体は当然満足しない。
「うっ、くうぅ……いやぁ、いやなのぉ。もっと、もっとぉ……」
 手足の自由を奪われながらも触手の愛撫に身悶え、体をくねらせ、貪欲にその責めを受けようとするが、そうすればする程に触手は肌を撫でるだけの愛撫へと移行していく。
「いやぁ、何でぇ……?」
 もっとしてぇ、激しくこの体を弄ってぇ。乳首やお豆を千切るほど責めてぇ。壊れる程アソコを責めてぇ。
 じゃないと私、熱くてヘンになっちゃうよぉ。
 燃えるように体が熱く、芯から甘く切ない疼きが私をおかしくさせる。もう我慢できない、もうこの滾る欲情を抑えられない。何とかしてぇ〜。
 じゅくじゅくに濡れた秘裂に何とか触手を挿れようとするが、その寸前で触手が逃げる。エリシアはとろんと、だが悔しそうにその触手を見ては淫らに腰を振る。
「先程までの毅然さは何処へやら。何ともはしたない姿だ。上から下から涎を垂らし、呆けた顔であんなにも嫌悪していた触手に身悶えるばかりか腰まで振っている」
 冷笑を浮かべるノスフェラトゥをもう睨み返すことはできなかった。エリシアはただ荒く艶っぽい淫靡な吐息を繰り返すばかり。
「いやぁ、お願い、お願いぃ〜」
「先ほどまで殺せだの言っていた割には、何とまぁ」
「ああぁ〜、いやぁ、もぉダメなのぉ。早く、早くしてぇ〜」
「……甘美な世界をもっと味わいたいか?」
 エリシアは涎を垂らしながら何度も頷く。
「我に魔力を提供するか?」
「します、しますからぁ、早くぅ」
「早く、何だ?」
 うつむきがちだったエリシアは顔を上げ、物欲しそうにノスフェラトゥを見詰める。
「欲しいのぉ、あなたのが欲しいのぉ。その大きいので私を犯してぇ、いっぱいいっぱい私をメチャメチャにしてぇ〜」
「よく言えた。そらっ、褒美だ」
 ノスフェラトゥがエリシアの体に触れると触手も一斉にエリシアを責め始めた。締め、弄り、撫で、絡み、そして柔肌を滑る度にエリシアは妖艶な嬌声を上げる。
「ああああああぁ、そう、そうよぉ。もっと触ってぇ、弄ってぇ、メチャクチャにしてぇ〜」
 触手に混じりノスフェラトゥの愛撫がエリシアを昂ぶらせる。エリシアはその度に体をくねらせ、熱い吐息を繰り返し、ぐじゅぐじゅになった秘裂を触手に押しつけては恍惚とした表情を浮かべる。
「では、そろそろいただこうか」
 とろとろと愛液の溢れ出す秘裂にノスフェラトゥの男根があてがわれただけで、エリシアはびくりと体を震わせた。
「あはぁ、早く、早く挿れてぇ〜」
 口元を歪めたが早いか、ノスフェラトゥはエリシアの秘裂に割り入った。
「ううぅ……くぅ、ぁはああぁ……すごいの、大きいのぉ」
 だらしなく開けた口からは止めどなく流れる涎と触手の液体。貫かれた秘裂は限界を訴えているが、エリシアにもう苦痛など無い。その全ての責めが甘美なる世界へと誘う手段であった。
「あ、あぁっ、うんっ……うぅあ、ぁあやぁ、ひぐぅ……やぁ、はああぅん」
 抽送を繰り返すノスフェラトゥにエリシアの腰も自ずとそれをより深く求めるかのように動く。触手はくまなく全身を愛撫し、全身性感帯となったエリシアを激しく苛む。
「いやぁ、すごいのぉ、感じちゃうのぉ〜。もっとしてぇ、もっと乳首をいじってぇ、お豆ももっともっといじってぇ。激しく壊れる程に突いてぇ〜」
 それを受けてかノスフェラトゥの動きが早まる。エリシアはガクガクとその肢体を揺らしては全身から来る快楽に打ち震える。気持ちよくなればなる程、無性に切なさが沸き上がり、それを満たそうと忘れようと甘美なる深淵に身を堕としていく。
「物足り無さそうだな。では、これはどうかな?」
 ノスフェラトゥが深い一突きをエリシアに与えたのを合図に触手がエリシアのアナル、そして柔肌を蹂躙する。抽送を繰り返す二穴からの快楽にエリシアの目の前は次第に白くなっていく。
「くあぁ、あっ……っく……はぁうん、、すごい、すごいよぉ。おなかの中いっぱいなのぉ、そんなにされたら私、壊れちゃうぅ〜」
 乳首の先端を触手が震えるように愛撫する。そうされるほどにエリシアの乳首はこれ以上無いくらいに尖り、またそれを愛撫されるとその痛さがどこか快楽へと変わっていく。
「はあぁ、おかしいのぉ、おかしくなっちゃうのぉ。もっと色々いじめて欲しいのぉ、前も後ろも突いて欲しいのぉ、メチャクチャに壊して欲しいのぉ〜」
「欲張りなお嬢さんだ」
「んあああぁ、いやぁ、気持ちいいよぉ、おなかの中でうねって、大きくて、深いぃ〜」
「フフフ、いい感じですよ、あなたの膣内は」
「あぁ、嬉しいのぉ。貴方にそう言われると……うあああああぁん、熱くて……もぉダメなのぉ、イっちゃいそうなのぉ〜」
 触手の動きが次第に早まっていく。エリシアの肢体が月光に照らされながら、ぬらぬらと輝く。
「あっ、ああぅ、んんぅ……やぁ、やあぁ、はぁう、んはああああああぁぅ」
 触手に合わせてノスフェラトゥの動きも早まっていく。
「こすれるのぉ、引き出されちゃいそうなのぉ。じんじんして、色んなとこくちゅくちゅされてぇ……うあああぅ、怖いのぉ、気持ちよ過ぎて怖いのぉ」
 あぁ、もう、もうダメぇ。気持ちよ過ぎて何も考えられない……。イきそう、イっちゃいそう……。
「あっ、ああっ、もっと、もっと突いてぇ。もうダメなのぉ、イかせて欲しいのぉ」
 顔を様々な液体でぐしゃぐしゃにしたエリシアは既に力無い瞳で虚空を見詰めながらうわ言のように呟く。
「では、お望み通りに」
「ひぃあ、あああぅん、やぁ、深い、深いよぉ。……もうダメ、本当にダメなのぉ、イっちゃうよぉ」
 もうどうなってもいい。どうにでもして欲しい。ただ、イかせて欲しい……。
「あぁう、も……ぅ……イっちゃう、イっっちゃうよぉ、ダメなのぉ!」
「そらっ、解き放つがよい!」
 ずぶりとノスフェラトゥの一撃がエリシアに深々と突き刺さると、エリシアはびくりと顔を上げ、体を震わせた。
「うぁ、やああああああああぁ、うっくううううううぅん……」
 びくびくとエリシアの体が震えたのを合図にしてか、触手の先端から、ノスフェラトゥのものから放出されるものがエリシアを汚す。だがエリシアはそうされることで安堵を得たかのように、ぐったりと気を失った。
「フフフ、楽しませてもらったよ」
 触手から解き放たれ、ノスフェラトゥの腕の中でぐったりとしているエリシアはもう何も考えられなかった。
「ぁ……はぁ、う……んっ……」
 大きく肩で息をし、秘裂やアナルからとろとろと流れ出るものを気にも留めずに、エリシアはただ快楽の余韻に身を任せていた。

 ノスフェラトゥに抱えられ、エリシアは森の更に奥へ行ったところにある洞窟へと運ばれた。
「さぁ、ついたぞ」
「あぁ……ぅ……?」
 うつろな瞳で仄明るい周囲を見まわすと、エリシアは大きく目を見開いた。
 そこには手足を岩壁とどうかさせられた女達がずらりと並んでいた。何人いるかはわからないが、ゆうに二十はいるだろう。そして各女のしたのは小型のマンドラゴラがおり、触手で女達を弄ったりしている。
 異様で醜悪な光景。だが女達は恍惚とした表情で虚空を見詰めている。熱い吐息、甘い喘ぎが洞窟内に響き渡っている。
「これは……?」
「ここでは君のように快楽に溺れた女達から触手によって精力を奪い、我が糧にしているのだ。私が死なぬ限りは女も死なず、いつまでも甘美な世界に住むことができる」
 ノスフェラトゥはエリシアを岩壁に押しつけると、奇妙に微笑んだ。
「さて、貴方には我が糧になるか、それとも死か選ばせてあげよう」
「そんなの、決まっているじゃない……」
 それを受け、エリシアは微笑み返す。
「ずっと気持ちよくさせてくれるんでしょ?」
「もちろんだ」
 ノスフェラトゥがエリシアの体から離れてもエリシアが倒れることはなかった。もう既にエリシアの両手両足は岩壁と一体化しており、その下には小型マンドラゴラがいた。
 これでようやく重い鎧をつけなくても、いいのね……。
 触手がエリシアの体を這う。
 うつろな思考の片隅でエリシアはこれからの快楽を想像し、喜んだ。